3月1日(日)、ちくりん舎主催の第2回ちくりん舎シンポジウム「広がる放射能と子どもたちへの健康影響~チェルノブイリの実態から考える~」がたましんRISURUホール(立川市市民会館)で行われました。あいにくの雨にもかかわらず約80名の方々が参加され熱気あふれるシンポジウムとなりました。
シンポジウムではアワプラネットTV代表の白石草(はじめ)さんから「チェルノブイリの実態、福島・日本の子どもたちの今後の健康」と題した講演が行われました。
その後「もう一つの内部被ばく~仮設焼却炉現場からの報告~」と題して放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会代表の和田央子(なかこ)さんから福島県内各地で進められている放射能汚染ゴミ焼却炉の問題についての活動報告がありました。
またNPO法人ちくりん舎からは副理事長の青木一政さんから「リネンプロジェクトから見えてきたもの」と題して、ちくりん舎やいくつかの団体が共同で進めている大気中浮遊塵の放射能測定についての報告がありました。
このシンポジウムには福島県南相馬市からつくば市に避難している平田安子さんはじめ4名の方々の参加がありました。平田さんからは福島原発事故の後、どのように生活が変わってしまったか、その大変な状況のお話がありました。最後に全体の報告を受けて活発な質問や意見交換が行われました。
以下、その概要をご紹介します。(当日のプレゼン資料の掲載を承諾頂いた講師の皆さんには感謝申し上げます)
(追記3.15:コメント欄に当日出席者アンケートからの主な感想を付記致しました)
【講演】「チェルノブイリの実態、福島・日本の子どもたちの今後の健康」
(白石草さん:アワプラネットTV代表)
白石さんは2013年と14年の2回にわたりチェルノブイリ事故後の状況を取材するためにウクライナを訪問しています。白石さんの報告は最初にアワプラネットTVが制作したビデオ「チェルノブイリ28年目の子どもたち」の短縮版の映像から始まりました。
映像や白石さんの講演からは、チェルノブイリ後のウクライナでは今も子どもたちに健康影響が出ていることを生々しく伝えるものでした。また憲法やチェルノブイリ法にもとづいて、国家として子どもたちの健診や保養などをきちんと実施している様子が分かり、日本の現在の状況とのあまりの大きな落差に驚かされるものでした。
(プレゼン資料)チェルノブイリの実態、福島・日本の子どもたちの今後の健康 11、12、13、14、15、16、17、18、2
(注:読み込みに多少時間がかかります)
(関連サイト)映像報告「チェルノブイリ・28年目の子どもたち」
【活動報告1】「もう一つの内部被ばく~仮設焼却炉現場からの報告~」
(和田央子さん:放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会代表)
和田さんは2012年秋に自宅から2キロの鮫川村に放射能汚染廃棄物焼却炉が秘密裏に建設されたことからその反対運動に立ち上がり、その後県内19カ所に24基もの同様な焼却炉建設計画があることを知り「連絡会」を立ち上げました。
鮫川村の仮設焼却炉は運転開始後9日目に爆発事故を起こしたが、情報公開請求でも肝心の部分は黒塗りで事故の原因がまったく明らかにされていないこと、事故後の説明会に参加しようとしても村外の住民は門前払いだったことなどを説明されました。
県内各地の焼却炉を調査し、仮設焼却炉の建設計画の裏には「何が何でも住民を帰還させる」という狙いがあり、除染ゴミ仮置き場があふれるために、仮設焼却炉でコンパクトにするという狙いがあるということを指摘されました。
(プレゼン資料)もうひとつの内部被ばく ~仮設焼却炉現場からの報告~
(関連サイト) ゴミから社会が見えてくる
【活動報告2】「リネンプロジェクトから見えてきたもの」
(青木一政:NPO法人ちくりん舎副理事長)
ちくりん舎からは青木一政さんがリネン吸着法による大気中の浮遊塵の放射能測定について報告しました。福島原発のすぐそばを通る国道6号線や常磐高速道の開通などにより、高濃度に汚染した粉塵が幹線道路沿いに広がってゆくことや、仮設焼却炉から排出される放射能を含んだ煙などにより放射能の二次汚染が懸念されること。特に細かな粒子は肺の奥まで到達して身体に取り込まれやすいことなどの指摘がありました。
そうした中で、市民レベルでも比較的簡単に空気中のホコリの放射能を測定する方法として麻布(リネン)を屋外に設置してその吸着した放射能量を調べるリネン吸着法の有効性についての報告がありました。
(プレゼン資料)リネン吸着プロジェクトについて ~大気中の粉塵の放射能調査~
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当日出席頂いたへのアンケートから主なものを以下に記します。
●ウクライナと日本の子どもたちへの取り組みの違い(日本は無策)。焼却炉による二次汚染。住民無視の焼却炉建設。空間線量とリネンで測定した放射線量の違いなど、今まで知らなかったお話をたくさん聞くことができ、勉強になりました。問題は大きいですが、まずは知ることから始まると思います。(30代・男性)
●白石さんの講演はすごくよかった。もう少し長くても良かったのでは。というのは、チェルノブイリと日本(福島)の健康調査の取り組み方の違い(日本は何もやっていない)と、その構造についてももっと詳しくお聞きしたかった。そして、どうすれば日本ももっと健康実態を把握し、対策(治療)を体系的にできるのか、アイディアがあれば教えていただきたいし、考えていきたいと思った。(30代・女性)
●国や政府の考え方、チェルノブイリ事故から学び活かせない事実。お金のために住民(国民)を犠牲にする政策は、許せないと思いました。白石さんの話は、子どもを持つ私には胸の痛い話でした。起こってしまった事故は元に戻せませんが、同じことを繰り返さないため、また今後被害を大きくしないため、ちくりん舎の活動を少しでも応援してきたいと思います。(40代・女性)
●具体例ばかりで大変わかりやすかった。白石さんのお話。コロステン他、生徒たちの様子に危機感を持ちました。土壌測定が基本であることを改めて思いました。和田さんのお話。こんなにたくさん(放射性廃棄物処分場)。利権で金も使われ、土地も放射能をばら撒かれ、悲しいです。たまたま鮫川で第1号が造られ、最初から勇気をもって声を上げて、すばらしいです。(50代・女性)
●キエフ、ウクライナの状況のおしらせ、ありがとうございました。非常に細かく、丁寧な人体に及ぼす影響の調査と資料、見事でした。日本はなんと後進国なことか。このままですと、若い人から赤ちゃんまで、未来の日本を支える人の健康が心配です。日本国の政治家や官僚、さらに財閥の人たちは、国民の健康は二の次です。すべて、自然と人を大切にしない国家は滅びます。(70代・男性)
●タイムリーな良い企画だったと思います。ちくりん舎、鮫川村などの報告もあり、幅広い勉強になりました。(80代・女性)