浪江町山火事で放射能拡散-福島県交渉(2回目)報告

11月9日に浪江町山火事の件で福島県危機管理部と2回目の交渉と意見交換を行いました。浪江町で2017年5月に発生した山火事の対応をめぐっては、7月19日に4項目の要望事項と5項目の質問事項を福島県危機管理部に提出しました。質問状には41の市民団体から賛同がありました。
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2017/07/post-ed89.html 

 質問項目については8月2日に福島県からの回答がありましたが、不十分と考え10月3日に再質問状を提出しました。この再質問状について11月9日に福島県危機管理部と2回目の交渉と意見交換の場を持ちました。

福島県との再交渉

山火事など放射能「再拡散」に対して避難基準は「ない」
 今回の交渉で明らかになったことは、帰還困難区域の山火事など放射能拡散が懸念される事態に対して、避難指示などの明確な基準がないことを福島県が明らかにした点です。今回、あらためて帰還困難区域の山林火災時の屋内退避や一時移転、避難指示などの体制や避難発出手順とその法的根拠について質問しました(再質問2-1、2-2)。それに対して、「屋内退避・一時避難等の指示発出の法律上の明確な定めはない」、「由来が発電所ではないものについては決めがない」との言明がありました。

 確かに、前回(8月2日付け)の福島県の回答でも、「住民の避難基準について」の項で、「万が一、避難指示区域を越えて高い空間線量が確認された場合には、原子力災害における防護措置に準じて屋内退避や一時移転の措置をとることが妥当」としています。官僚的文書で意味する本当のところが分かりにくかったのですが、「原子力災害における防護措置に準じて」というのは、発電所由来でない放射性物質拡散に対しては、法律上の「決めがない」から、原子力災害に「準じて」というわけです。問題になっている放射能汚染は福島原発由来のものであることは疑いありませんが、いったん原発外へ出てしまったものは、再拡散しても「原発由来でない」というのもおかしな話です。

 福島県では、過去にも伊達市霊山など高濃度に汚染した山林の山火事が発生しています。また山火事だけでなく指定廃棄物を保管していた倉庫の火災によりフレコンバッグの焼却灰200袋近くが燃えた事件も起こっています。放射能汚染物が周辺に存在する住民にとって、このことは極めて切実な問題です。

相変わらず「放射線量に変化なし」に固執する福島県
 最初の質問状で、私たちの懸念は火災による放射性物質の再拡散であり、放射性物質を吸い込むことによる内部被ばくの問題であることを明らかにしています。第1回目の交渉においては趣旨説明の文書で、「空間線量率の変化なし」をもって安全とすることについての問題を指摘しました。しかし2回目の交渉においても、依然として空間線量率のみを問題にする姿勢は変わっていません。

 前述の避難指示についての質問でも、「山火事などが発生したときは原則、既存のモニタリングポストで監視できると考えている」、「空間線量率のモニタリングはしていきたい」、「人がいるところで万が一高い空間線量率が計測された時には・・県、国、市町村が協議して対応」などの説明がありました。

 福島原発事故で福島県周辺は高濃度に汚染され、現在でも空間線量率(バックグラウンド)が高い状態にあります。このような状況の中で「空間線量率に変化なし」ということに固執して周辺への放射能再拡散はないというのは極めて大きな問題であると考えます。

ダストサンプラ調査で更新頻度アップ、検出限界改善などの努力を約束
 2回目の交渉でわずかですが改善につながる前進もありました。福島県では独自に県内49か所で空気中粉じんの放射能を調査するダストサンプラ調査を毎月行っています。しかしこの測定結果が福島県のホームページ上では半年以上も更新されない事態が続いていました。今回の山火事との関連でこのデータが長期間に渡って更新されていないことを指摘し、改善を要求しました。今回、この更新遅れの説明と改善の説明がありました。(質問4-1,4-2)。更新が遅れていることに対して、「解析に時間がかかった、これは全然理由にならないので今後ならないようにする」として今後は遅くとも2か月後までには全てのデータを公開することを約束しました。

 またこの49か所のうち、9か所については検出限界が0.3ミリベクレル/㎥と他の40か所に比べて10倍程度高い場所がありました。この9か所は主に福島第一原発に近い地域ですのでなおさら問題です。これについて説明と改善を要望しました。

 当初の説明では、「全体の傾向に大きな影響はない」、「あまり下限値を低くしてもナンセンス」などと説明していましたが、参加者の丁寧な説明や鋭い追及の結果、9か所は設置場所の制約があり設備的に十分なものが設置できていないことを認めました。県側の発言で「我々の方でも努力が足りないところがあるので頑張ってやるようにします」、「事故前の状態ですがこれこれの範囲の変動だった、ということをきちんとお伝えしていかないと、正しい判断ができない」との発言がありました。

 福島県の継続した努力により調査体制と広報について、言葉だけでなく具体的に改善がみられるかどうか引き続き監視が必要と考えます。

揺れる県の立場―ICRP基準で「問題はない」、一方で継続する廃炉作業リスクへの不安
 また今回の交渉では国の姿勢と県民の立場との間で微妙な立場をとっている県の状況の一端も明らかになりました。その例として、大気中浮遊じんの評価の姿勢があります。前述した空間線量率への固執もそうですが、ダストサンプラ調査の検出限界の説明においても、明らかに国が放射線防護の根拠としているICRPを(ICRPと言葉には出しませんが)前提とした説明でした。「調査で発表しているのはミリベクレル/㎥で出しているが逆で、この下のところで変化が激しいとかいうのはナンセンス」、「センシティブであればあるほど近くの舞い上がりを吸っても数値が上がる」、「住民に影響を及ぼすレベルなのかどかというのが問題」というような説明です。

 これに対して、参加者からフィルターのオートラジオグラフィを示して、「数値にならなくてもこのように放射線を発する粒子を吸い込んでいることが問題」という指摘や、南相馬市が独自に調査しているダストサンプラー調査では山火事があった5月以降継続して、それまで0.1ミリベクレル/㎥以下だったものが、0.1以上の値を継続していることの説明、事故前と比べると現在の福島県では大気中浮遊じんの放射能は1000倍とか1万倍のオーダーになっており、そのことを県民に正しく伝えることの重要性などの指摘が丁寧に行われました。これらの説明や意見に対しては、県の担当者も正面からの反論はできず「おっしゃることは分かります」との反応がありました。

 一方で県としては国や原子力規制委員会などの言いなりになっているわけではないとの説明がありました。その例として、2013年に発生したフクイチ3号炉屋根の工事により、粉塵が南相馬まで飛散しコメの汚染として発覚した問題です。県はこの問題を受けて大気中浮遊じんの調査体制をそれまでの4局体制から49か所に大幅に拡充したというものです。その結果、40か所のダストサンプラの検出下限が0.03ミリベクレル/㎥で整備されたということです。また未だにフクイチからの飛散であることを認めない原子力規制委員会には「抗議した」との発言もありました。

 こうした県の努力を私たちは無視したり否定したりするわけではありません。しかしそうであれば尚のこと、県民の不安や危惧を正面から受けて、国や環境省の一方的な説明や方針をうのみにせず住民の立場から活動して欲しいものです。

法律的根拠なく業務としての被ばくを強要される消防団員※1
 さらに今回明らかになったことが消防団員の被ばく防護の問題です。消防団員の被ばく防護の体制について質問したところ(質問1-4)、「福島県広域消防相互応援協定に基づく避難指示区域の広域応援活動方針」に基づいて行っているとの説明がありました。それによれば。消防団員の被ばく限度は年間10mSvであり、電離則で定める放射線業務従事者の5分の一、5年間で50mSvで放射線業務従事者の2分の一だとの説明がありました。この「活動方針」は消防本部内で決めたものだとのことです。

※1: 双葉消防本部に尋ねたところ、消防団員は避難指示区域では消火活動に当たらないことと総務省から指示が出ているそうです。福島県側の応答は消防隊員を指すと思われます。(2017.11.27追記)

 しかしこれも問題があります。電離則が定める放射線業務従事者は放射線を取り扱うことを前提として職業に就き、それを前提として賃金を受けとっているわけです。それでも健康リスクなどの問題が大きくならないように被ばく量の上限の制限だけでなく、特別教育や健康診断などを受けることが法律で義務付けられています。しかし消防団員は被ばくをうけることを前提とした職業ではありません。消火のためだからといって、放射線業務従事者より少ないとは言え、被ばくを前提とした業務を行わなければならない義務はないはずです。本来、消防団員は一般住民と同じ公衆被曝限度年間1ミリのもとで生活する権利があるはずです。そもそも年間20mSvを下回ったら避難指定を解除されて何の保障も受けない一般住民も同様の問題を抱えていますが、汚染地域で消火作業にあたらなければならない消防団員は更に大きなリスクにさらされることになります。消防団員のリスクの問題は、今後引き続き課題となると考えます。

最初の質問状に対する福島県からの回答

再質問状

今回の交渉の議事要旨

 

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