辻さんのfacebook(2018.2.11)より転載させて頂きました。
昨日のちくりん舎シンポジウムには、80人を超える参加をいただきました。
今回のシンポジウムでは、被災地周辺で進められている除染ゴミの焼却と、あちこちで誘致が進む木質バイオマス発電の問題を取り上げました。
最初に、ちくりん舎の青木一政さんが、放射能を含んだゴミや材木を燃やすことの問題点を指摘しました。環境省は、バグフィルターを使えば、燃やした煙の中に含まれる放射能(放射能を含んだ細かい塵)を99.9%捉えることができると説明しています。
しかし、その99.9%というのは、重量で換算した値であり、粒子の数を示したものではありません。微小な塵はほとんどバグフィルターを通過して、大気に放出されてしまうのです。そして、微小な塵に含まれる放射能は肺の奥に沈着し、人体に大きな影響を与える恐れがあります。
フィルターのJIS規格では、そのことを考慮し、フィルターの使用目的に合わせて、検査に使う粒子の大きさを変えています。そして、高性能のフィルターについては、重量ではなく粒子の数で性能を評価しています。これが業界の常識なのです。
そして、実は、原子力発電所でもフィルターを使用しています。しかし、そこで使われているのは、バグフィルターではなく、へパフィルターというもっと性能の高いフィルターです。
こうした事実を知りながら、バグフィルターを使って放射能ゴミを燃やすとは・・・。改めて「市民科学」の重要性を認識しました。
このお話に続き、各地で実際に起きている放射能ゴミの焼却問題や、木質バイオマス発電誘致問題について、
「放射能ゴミ焼却を考える福島連絡会」の和田央子さん、
「みどりの里の環境を考える会」(三条市)の鶴巻俊樹さん、
「塙町木質バイオマス発電問題連絡会」の金澤光倫さん
の3人から報告がありました。
原発事故後、福島では仮設焼却炉の建設ラッシュが起こり、各所に数十億円から数百億円をかけて、仮設焼却炉が作られました。「仮設」なので、すでに再び億単位のお金をかけて解体作業も進んでいます。そうした現状が、和田さんから報告されました。
また、和田さんからは、「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」という、まるで「ショック・ドクトリン(惨事便乗型資本主義」を思わせる「壮大な」計画が進められている現状についても報告がありました。
鶴巻さんからは、物作りの町として有名な三条市で、地元工業団地組合や市民の反対があったにもかかわらず、バイオマス発電所が建設されてしまった経緯について報告がありました。今後は、ちくりん舎のリネンプロジェクトと連携して、放射能汚染の監視を続けていくことになっています。
最後に金澤さんから、バイオマス発電所建設問題が浮上した、福島県塙町、栃木県日光市、田村市大越町の状況について報告がありました。
日光市と田村市大越町では、発電所誘致に反対する市民と行政との間で、攻防が続いています。田村市長は、「放射能汚染に対する不安、それによる反対の声はあるが、その意見のまま事業を進めていたら、今の福島の復興はなかった」と言い放ちました。大越町のバイオマス発電所では、汚染度が飛び抜けて高い樹皮の部分について、当初は使わない約束をしていましたが、一方的に計画を変更して、燃やすことになりました。
そして、金沢さんの住む塙町では、町民の反対運動により、見事、発電所計画の白紙撤回を勝ち取りました。残念ながら町議会は機能したなかったそうですが、町民集会でリコール請求が決まり、その結果、町長は撤回せざるを得なくなりました。住民手作りの看板などが画面に映し出され、さらに、田んぼの土手の草を刈って浮かび上がらせた発電所建設反対の文字。この画面には、会場も盛り上がりました。3つの事例の中で一番計画浮上が早かったのが福島県塙町です。反対運動のパワーは町民の「怒り」にあったと言います。
原発事故から7年が過ぎようとしている今、様々な問題提起を含む、中身の濃いシンポジウムになったのではないかと思います。
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