大崎市試験焼却差し止め裁判の証拠としてリネン監視結果を提出

7月19日、宮城県大崎市での放射能汚染ごみ試験焼却の差し止めを求める仮処分の訴えで仙台高裁は住民の抗告を却下する決定をしました。裁判所は、住民組織が行政側と交わした事前申し合わせについて「住民の同意が得られなかった場合に焼却施設の機能変更が禁止されると解することはできない」との判断です。住民が同意しなくとも汚染稲わらなど放射能ごみを焼却できるという極めて一方的な判決です。

https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201907/20190720_13044.html

この仮処分の訴えとは別に、行政側に汚染ごみ焼却の公金支出差し止めを求める裁判(本訴)が継続中です。

今回、この本訴の証拠資料としてリネン吸着法による監視結果を提出しました。仮処分の訴えの証拠として試験焼却前半(2018年10月~2019年1月)の監視結果を提出したことはすでに報告しました。今回の証拠資料はこの前半分と後半分(2019年1月~3月)の監視結果を合わせたものです。

後半の期間でも前半と同様の結果が得られたことは、玉造クリーンセンターから恒常的にセシウム粉塵漏れが起きていることを示すとともに、リネン吸着法の信頼性を明らかにするものです。この証拠書類の内容を紹介します。

玉造クリーンセンター周辺の大気中粉じんのセシウム濃度調査(試験焼却後半分を含む)

資料-玉造クリーンセンター周辺前後半調査結果

玉造クリーンセンター周辺の大気中粉じんのセシウム濃度調査(試験焼却後半分を含む)
2019年7月17日
NPO法人市民放射能監視センター副理事長 青木一政

1. 調査目的
農林業系汚染廃棄物の試験焼却による周辺環境へのセシウムを含む微小ばいじんの拡散が懸念されるためこれをリネン吸着法により監視した。測定の信頼性を上げるため試験焼却前半3か月と後半3か月分の2回に分けて計測した。本報告は後半分を含めた報告である。

2. 調査にもちいた手法
(1) 調査方法はNPO法人市民放射能監視センター(ちくりん舎)で開発したリネン吸着法を用いた。
(2) リネン吸着法とはリネン(麻布)を屋外に一定期間吊るして置き、それを回収した後にゲルマニウム半導体測定器で精密に測定して、リネン布に吸着された微小ばいじんのセシウム量を測定するものである。単位は1㎡当たり、1時間当たりのセシウム137の吸着量である。
(3) リネンに吸着されたセシウム137量により大気中の微小ばいじんセシウム濃度を定量的に測定することができる。
(4) 使用したリネンはベラルーシ製で商品名OBR2701#30である。また一括購入したリネン布バッチごとに未使用状態でゲルマニウム半導体測定器により測定し、セシウム137の付着がないことを確認した。
(5) ゲルマニウム半導体測定器は検出部はBSI社製高純度ゲルマニウム(HPGe)、データ収集はItech technologies社ORIONデジタル収集システム、解析ソフトはItech technologies社InterWinnerを用いた。

3. 玉造クリーンセンター(以下、玉造CC)周辺での調査実施要領
(1) 調査期間(リネン設置期間):2018年10月15日~2019年1月6日(前半)、2019年1月7日~2019年3月31日(後半)
(2) 設置場所の考え方:環境省「ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアル」(平成21年3月)に従って、玉造CCを固定発生源として、風下方向に最大着地濃度発生地点を1.5~2.0km程度と想定してリネン設置場所を設定した。
(3) 風向データの取得:風向データについては玉造CCの北西約5kmの場所にあるアメダス川渡の同期間の風向データを参照した。風向データは同期間の1時間毎の風向データをもとにレーダーチャート(風下方向を表す)を作成した。

4. 測定結果
資料図1が後半の測定結果である。図2は前半の測定結果である。また表1は前半、後半の検出結果とその比率をまとめたものである。

5. 考察
(1) 監視期間中の風向データをアメダスより取得し風配図(風下)を図1,2に付けた。風配図からは後半は西風の傾向がより明瞭であるが、大枠では前半、後半共で大きな違いはないと考えられる。
(2) 図1が後半のリネン吸着法の結果である。前半の最大値を観測した地点(Aー7)は後半でも高い傾向を示した。後半結果での最大値を示したのはA-10地点である。A-10地点は前半では測定しておらず前半との比較はできない。しかしA-7地点の近傍であり、玉造クリーンセンターから東方向2.5キロメートル程度の地点を「最大着地濃度地点」とした前半での結論を補強するものである。
(3) 前半で2番目に高い値を記録したA-6地点(0.16mBq/m2・h)は今回は0.05であり約3分の1に減少した。この理由は不明であるが、風向きのばらつき度合いと地形の影響による可能性が考えられる。
(4) 前半と後半での測定値を比較すると例外はあるが、後半がやや低い傾向にある。これは後半の試験焼却の予定ずれ(3月31日までに2クール分のみ完了)の可能性も考えられる。しかし一般ごみの汚染状況の影響も考えられるので断定はできない。
(5) 前後半での風向きがほぼ同様であったこと、そのもとで前後半でのリネン吸着法の測定結果が概して同様傾向であったこと、またその絶対値も各地点で同レベルの値を示していることは、リネン吸着法が再現性にすぐれ大気中粉じん中のセシウム濃度を測定するのに十分信頼性があることを示している。

6. 結論
リネンに吸着されたセシウムは玉造CCからの微小ばいじんのみではなく、福島原発事故後地上にセシウムが沈着した土壌の舞い上がり、花粉や胞子などバイオエアロゾルによる影響も考えられる(バックグラウンドに相当)。しかし、前後半でほぼ同一の風向の条件のもと、玉造CCを中心に南東方向に2km程度の地点にピークを持つ分布が再現することを、これらのバックグラウンドの影響で合理的に説明することはできない。
玉造CCをセシウム137を含む微小ばいじんの固定放出源と想定することが合理的である。

以上

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