原告6人が法廷で証言―南相馬20ミリ基準撤回訴訟

昨日12月11日南相馬・避難20ミリ基準撤回訴訟の第17回目の法廷が開かれました。今回はこれまでの長い裁判の中で、初めて原告6人に対する本人尋問が行われました。

 

東京地裁前には支援者・傍聴者がたくさん駆け付けた

法廷に立ったのは南相馬市原町区の3人の区長さん、Kさん、Fさん、Sさん、そして3人の子どもをもつお母さんEさん、那須塩原に一時的に避難していたSTさん、ふくいちモニタリングプロジェクトで周辺の測定をしたり尿検査を受けたHさんの6人。皆さん、法廷で50分近く原告側、被告側代理人(弁護士)からの尋問に答えるのは当然初めての経験であり随分と緊張したことでしょう。しかし皆さん立派にそして生々しく、南相馬市原町区の原発事故後の実態を証言されました。

原告側弁護士の皆さんが、住民6人の方の説明をこれまでの準備書面などを示しながら実にうまく引き出してくれたのが印象に残ります。

・避難指定や解除にあたっての測定は、玄関先と庭の中央など2点のみの測定だったこと。
・本人がいないときに勝手に測って数値の紙だけが残されていたこともあったこと。
・雨どいの下、家の裏側など周辺では高いところが一杯あること。
・解除にあたって説明会で解除に賛成する住民はいなかったこと。説明会で住民が反対意見を言っても「聞く耳を持たなかった」こと。
・避難指定が解除されたため、経済的な理由で戻らざるをえなかったこと。
・若い世代の家族は戻って来ないため消防団や地域の活動、産科、小児科がなくなり、保育園や幼稚園、小学校が閉鎖されコミュニティが崩壊したこと。
・ふくいちモニタリングの皆さんがきちんと丁寧に測っていること。
・50日間の保養で尿検査結果が急激に下がったこと。等々です。

それに比べて被告側弁護士の尋問はとてもいやらしいものでした。先に紹介した地域の生々しい実態についての質問は一切ありませんでした。事務的・手続き的な面での質問が続きました。

区長の3人は、行政区長と南相馬市の行政嘱託の業務を兼務しています。被告側弁護士は南相馬市の条例を示して、行政嘱託の業務に住民の意見を代表したりまとめたりする権限がないことを質問で迫りました。これに対して、3人はひるむことなく、行政区長と嘱託とは全く別の職務であること。行政区長は行政区の総員から民主的な方法で選出されていること、そして行政区長の役割として、行政区の住民の生命、財産を守ることが役割だとみごとに切り返しました。本当に地域のリーダとして日常から信頼されそして今回の20ミリ裁判でもリーダシップを発揮されていることを堂々と明らかにしたと感じました。

いやらしい質問は他にもあります。区長のFさんに対して、避難先の仮設住宅から戻ったのは何時か?と迫り、避難指定解除の前ではないかと質問してきたのです。これに対してFさんは、除染が始まり業者と住民(避難指定されていないので住んでいる住民もいる)との調整役として、昼も夜も業者や住民と話をしなければならなかったこと、そのために家族は仮設にいながら南相馬の自宅で過ごさざるを得なかったことなどを説明しました。

また、避難指定解除にあたり、2014年7月と10月と2回ほど通知や説明会があったことをたてにとり、「住民の反対意見で解除を延期しましたね」というような質問をしたのです。これはまさにトリックのような質問です。数か月で汚染状況が変わるわけはありません。住民に解除を通知してそれの反対が強いため、解除のタイミングを見計らっただけのものです。住民の意見を取り入れて解除を延期したなどと、到底いえるものではありません。

解除が実際に行われる12月の直前に説明に訪れた高木副大臣(当時)は、「まだ線量が高い」と反対する住民に「お掃除をしましょう」と言って解除したのです。実際に行われたのは枝葉などを掃除してごみ袋に入れておいて帰った、除染ならぬ「お掃除」だったのです。

被告側弁護士はこの「お掃除」について、「住民の方が残されたゴミ袋をごみ処分場に持って行くのを手伝いましたよね」と質問しました。家の前に残された「ごみ袋」を住民が善意で、あるいはしびれを切らせて不満ながら片付けたことは事実でしょう。

思わず「ハァ?!」と感じました。この質問をした被告国側代理人は、住民が善意で片付けに協力したことを「避難指定解除に賛成した事実」として裁判官に印象付けたかったのでしょうか。

裁判官がこうしたやり取りをどう受け止めたのでしょうか。
原告側弁護士に「最後に裁判長に伝えたいことはありますか」との質問にSTさんは「裁判長、あなたが私の立場だったらどう感ずるのか。自分のことに置き換えて考えていただきたい」と発言されました。

全くその通りだと思います。

次回法廷は4月24日となりました。

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