大崎市放射能ごみ焼却住民訴訟が結審(その2)

 前回に引き続き、大崎市放射能ごみ焼却住民訴訟最終口頭弁論期日の報告です。

 本裁判の主要争点は、大崎市の一般ごみ焼却施設(3箇所)において、8000Bq/kg以下の汚染稲わら、汚染牧草等の焼却が、地元自治会や水利組合との協定違反に当たるかどうか、という法的争点に加え、放射能ごみ焼却によりセシウムを含む微小粒子の周辺への拡散が、がんやそのたの疾病リスクを高めるため周辺住民の平穏生活権を侵害する点が争点になっています。

法廷では前回ブログで紹介した「バグフィルターはセシウムを含む微小粒子を捕捉できない」とのビデオ証言に加え、矢ケ崎克馬琉球大名誉教授の、「低線量内部被ばくによる危険性」のビデオ証言が放映されました。

矢ケ崎名誉教授のビデオ証言を紹介します。(下記の画像をクリックすると証言ビデオが見れます)

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大崎市放射能ごみ焼却住民訴訟が結審(その1)

5月29日仙台地裁において、大崎市放射能ごみ焼却住民訴訟口頭弁論が開かれました。

前回期日において、裁判長が結審するような発言をしたため、原告弁護団が次々に発言に立ち科学者の証人尋問をすべきだとの主張を展開しました。その結果、裁判長は証人尋問そのものは認めなかったものの、科学者2名のプレゼンテーションを法廷でビデオで上映することまで譲歩し結審が、今回まで延期になりました。

科学者のプレゼンテーションとして、原告弁護団は2人の科学者のプレゼンビデオを用意しました。

(1)「バグフィルタはセシウムを含む微小粒子を捕捉できない」 青木一政 (ちくりん舎副理事長)
(2)「放射線と内部被ばくの危険性」 矢ケ崎克馬 (琉球大名誉教授)

どちらも、本裁判の核心部分です。法廷で流されたビデオを2回に分けて紹介します。今回は(1)のビデオです。(下記の画像をクリックするとプレゼンビデオが見られます)

次回判決は10月4日(水)13:30から仙台地裁で行われます。ご注目下さい。

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オンライン ・ カフェ 報告集「田村バイオマス 控訴審の不当判決と 放射能ゴミ焼却を考える」を発行しました

3月30日のちくりん舎オンライン・カフェ「田村バイオマス 控訴審の不当判決と 放射能ゴミ焼却を考える」報告集を発行しました。

田村バイオマス訴訟にいたる経緯、不当な控訴審判決内容、本訴訟を通じて明らかになった点や、報告を踏まえての質疑応答、議論の内容が収録されています。是非、お申込み下さい。(会員、賛助会員の方は5/1に発送済みです)

1部500円(他に郵送料実費が必要です)でお送りします。必要な方は必要部数・送付先・氏名を書いて下記へご連絡ください。請求書を同封しますので、受け取り後、料金をお振込みください。

メール:lab.chikurin@gmail.com Fax:042-519-9378 こちらのページからも直接申し込みもできます。

A4カラー 50p

【目次】

はじめに                               ・・・・・  4
<第1 部 報告>
福島の山林汚染とバイオマス発電による放射能のばらまき
  和田央子さん(放射能ごみ焼却を考えるふくしま連絡会)       ・・・・・  5
訴訟に至った経過と住民の思い   
  久住秀司さん ( 大越町の環境を守る会)              ・・・・・ 22
控訴審判決内容と批判 
  青木一政さん(ちくりん舎)                   ・・・・・ 28
訴訟の意義と成果
産廃焼却炉の隠れ蓑としての「バイオマス発電」の問題点  坂本博之(弁護士)                                ・・・・・ 40

<第2部 質疑・意見交換>
質疑・意見交換
~裁判で明らかになった事実をもとに新たな運動へ            ・・・・・42

「はじめに」より

本ブックレットは2023年3月30日に行われた、ちくりん舎オンライン・カフェ「燃やすな放射能汚染木-田村バイオマス控訴審の不当判決と放射能ごみ焼却を考える」の報告資料や、後半の質疑・討論の内容をもとに編集したものです。

岸田政権は5月に開催されるG7会合に先立ち4月に札幌で開催される、気候・エネルギー・環境相会合において、汚染水放出、汚染土「再利用」の「進捗を歓迎する」旨の文言を共同宣言に盛り込もうと画策しています。岸田政権は汚染水の海洋放出や、8000Bq/kg以下の汚染土を「リサイクル」と称して公共事業で活用するという、その強引な放射能ばら撒き政策を、G7各国からの合意により正当化しようとしています。

GX推進で各国が原発推進に方向転換する中、G7各国も将来起こりうる原発事故に備え、モデルケースとして日本政府のやり方を利用しようと考えている可能性は高いでしょう。我々はこの岸田政権の目論見に断固反対するものです。

 汚染水海洋放出や汚染土の再利用ほど注目されず知られていないのが、放射能ごみの一般焼却炉での焼却や、福島県内外の放射能汚染木を燃料とする「バイオマス発電」です。放射能汚染物を燃やしても、放射能が分解されたり、無害になることはありません。むしろ、燃やすことにより放射能は灰に濃縮され、焼却により排ガスに含まれる微小な放射能を含むばいじんがまき散らされます。そして、回収された灰が一般ごみと同様に廃棄されることも問題ですが、それどころか、セメント原料や土質改良材としての利用がすでに始まっています。放射能ごみ焼却も、汚染木を燃料とするバイオマス発電も、放射能ばら撒きそのものです。

 この冊子はオンライン・カフェの記録集ですが、焼却による放射能のばら撒きを何とか止めたいという思いで活動してきた人々の闘いの記録でもあります。地裁、高裁ともに極めて不当な判決で負けましたが、放射能ごみ焼却がいかにでたらめな目先の利益追求であるか、そして、原発事故の後始末がいかに困難であるかを明らかにしています。

 この小さなブックレットが一人でも多くの方の目にとまり、原発を止め、もうこれ以上核廃棄物を出さない、子や孫の世代に負の遺産を残さないという、人類の倫理的な闘いの一助になることを願っています。

2023年4月

ちくりん舎(NPO法人市民放射能監視センター)

 

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ドイツ環境相「処理水の放出を歓迎することはできない」 -失敗した岸田政権の目論見  G7環境相会合に合わせて札幌でスタンディング行動

フクロウ通信第45号記事からの転載紹介です。

5月広島で開催予定のG7の前段として4月15、16日、札幌において主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合が開かれました。そもそも、米を筆頭に膨大なエネルギー消費大国、気候危機に最も重い責任を持つG7の環境大臣会合そのものが「やっているふり」のポーズだけで、あわよくば、環境対策を自らの経済的・政治的利益に誘導しようとするものであり、直面する気候危機への根本的対策などは期待できるものではありません。そのような中においても、岸田政権の今回のG7環境相会合への目論見は最も破廉恥なものでした。岸田政権はその環境相共同声明に、福島原発事故による汚染水の海洋放出、汚染土の再利用について「その進展を歓迎する」との文言を入れ、「放射能ばらまき」ともいえる自らの政策にG7からのお墨付きを得ようと画策していたのです。

「処理水の放出を歓迎することはできない」-ドイツ・レムケ環境相の強烈な一撃

会合終了後の記者会見で岸田政権の目論見はレムケ環境相の強烈な反撃で脆くも崩れ去りました。記者会見にはイタリア、ドイツの環境大臣と並んで、何故か経産大臣の西村康捻氏が並び、最初に発言しました。西村経産相は「処理水の海洋放出を含む廃炉の着実な進展、そして、科学的根拠に基づく我が国の透明性のある取り組みが歓迎される」と述べたのです。その直後、間髪を入れずドイツ・レムケ環境大臣が「原発事故後、東京電力や日本政府が努力してきたことには敬意を払う」としながらも、「処理水の放出を歓迎するということはできない」と明言したのです。

西村経産相は会見後「私のちょっと言い間違えで」と釈明しましたが、「取り組みが歓迎される」という微妙な言い回しが、言い間違えと言えるのか、にわかには信じがたいところです。レムケ環境相の即座の的確な主張がなければ、西村経産相の狙いがそのままメディアに垂れ流された可能性すら考えられます。

韓国ハンギョレ新聞キム・ソヨン特派員はこの点について、鋭く切り込んでいます。「ところで、これは本当に言い間違いなのだろうか。日本政府は議長国の地位を活用し、この声明文に「処理水放出歓迎」の文言を入れるために、執拗に準備してきた。G7が歓迎したということを盾に、韓国や中国などの周辺国と日本国内の反対世論を突破するつもりだった。この文言を草案に入れ、自国のメディアにこれを裏で流しつつ(朝日新聞2月22日付1面報道)、2カ月以上にわたり各国を説得したが、最終的には失敗したのだ。」 (2023年4月18日付ハンギョレ新聞)

住民を守らない―日本政府の原発事故対策が今後のスタンダードにされる

2月22日付朝日新聞報道により大変な危機感を抱きました。気候危機対策としてCO2を発生させないクリーンなエネルギー源として、日本を始めとして、各国で再び原発推進へと方向転換をはかる動きがあります。福島原発事故以降の日本政府の事故対応は一言で言えば、住民を守らない、放射線被害はたいしたことではない、という無茶苦茶なものでした。原子力推進を前提とした、国際原子力ムラの放射線防護機関であるICRPの勧告すら平然と無視し、住民を被ばくさせ、環境を破壊し、原発事故の後始末でも、有り余る復興予算で原子力関連企業、ゼネコンを儲けさせてきたことは明らかです。原子力推進に伴い、原発事故のリスクは当然高まります。G7でこのような日本政府の「放射能ばらまき」政策が合意文書に残されてしまえば、日本政府のやり方が、今後の原発事故処理のスタンダードとされてしまう可能性があります。

何とか、札幌でカウンター行動を実現できないか

この報道に接し、何とか、この合意を阻止できないものか。どうしたらこの流れにブレーキをかけられるか、連日、その対応を模索しました。そのような中で、福島の市民を中心とした「これ以上海を汚すな!市民会議」の一人で札幌近郊に在住している方が、15,16日当日に札幌でスタンディング・アピールを計画しているとの情報が入りました。札幌に集まることはかなり困難なことです。本州からはもちろん、北海道は広いので、北海道在住者とは言え札幌に駆け付けることは大変困難です。それでも、G7環境相会合の開かれる現地でアピールすることの意義は大きい。何としても実現したいとの思いで動き始めました。

行動を計画していた地脇美和さんと連絡を取り合い、日程や時間を調整し、「札幌G7 気候・エネルギー・環境相会合-カウンター・スタンディング・アピール行動の呼びかけ」という文書を4月4日に発送しました。特定の組織や団体への呼びかけではなく、この重大な問題に賛同し参加のできる方へ個人として主体的に参加して欲しいとの呼びかけです。幸いこれまでの活動の中で連携が出来ていた「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」や「原発廃炉金属の再利用を監視する市民の会(北海道・室蘭)」、札幌の市民測定室「はかーる札幌」などで活動する個人から前向きの反応がありました。

海外メディア向けの英語の横断幕の準備では「ちくりん舎カフェ」に参加された、米国在住のレイチェル・クラークさんからインパクトのある英文表現や、イラストなどで有効なアドヴァイスをいただきました。様々な困難を乗り越えて、これまでの繋がりが一段と広がり深い協力関係に結びついていきました。

15、16日に延べ20人くらいの人々が参加し、横断幕、プラカード、リレートークなどで連日5時間近く、やや無謀ともいえるスタンディング・アピールを実現することができました。

トンガ、フィジー、オーストラリアからの代表との交流も

16日は悪天候で雨脚が弱くなった時間帯を見計らいながらの行動となりました。昼過ぎには前日アジア太平洋資料センター(PARC)他の共催で開かれた講演会にゲスト参加していた、トンガ、フィジー、オーストラリアの代表の皆さんとのミニ交流会も行われました。トンガではすでに気候変動で海面上昇により村を内陸に移転しなければならないような事態になっている。それでも原発はその対策にはならない。まして汚染水の海洋放出もとんでもないと話していました。フィジーでは深海底のレアメタルの採掘がカナダの会社によって進められているそうです。目的は電気自動車用バッテリーに使われる鉱物。これも巨大な海底の鉱床の採掘で、結局は自然破壊につながる。ウクライナ戦争によるロシアへの経済制裁の影響で、新たな資源開発として南太平洋の海底が狙われているということだそうです。気候変動対策と脱原発とそして戦争反対は一体のものだという話が印象に残りました。

世界的な規模で広がる汚染水放出反対の声

これ以上海を汚すな!市民会議の呼びかけで4月13日に国内外で汚染水放出に反対する一斉スタンディング・アピール行動が呼びかけられました。行動は国内各地に留まらず、韓国、フィリピン、カナダ、ソロモン諸島、マーシャル諸島、フィジー、ベトナム、米国などに広まっています。また行動は13日に留まらず国内外各地で継続しています。さらに4月10日には5月19-21日G7サミットに向け「原発推進反対、汚染水・汚染土拡散を止めよ」との国際署名(Change.org)も立ち上がっています。

冒頭のドイツ・レムケ環境相の発言も、こうした世界に広がる声を背景としていると言えるでしょう。また、これまで、汚染水の放出に内外の注目が集まっていましたが、今回の一連の動きの中で、汚染土の再利用、福島原発事故以降の、汚染物を薄めてばら撒くという日本のやり方そのものに注目と反対の声が集まったことも大きな前進です。

札幌でのわずか2日間、延べ20名程度の活動でしたが、国内外への広がりの一環として大きな意味を持たせることができたと考えています。引き続き、5月サミット本番に向け、原発推進反対、放射能のばらまき反対の声を国際的に広めていきましょう。

青木一政

※この報告の後、さらに環境省のHPで共同声明の和訳が環境省の立場に都合よく改ざん(2カ所)されていることが明らかになりました。詳しくは「放射線被ばくを学習する会」のHPをご覧ください。

 

 

 

 

 

 

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【報告】田村バイオマス控訴審の不当判決と放射能ごみ焼却を考えるオンライン・カフェ

3月30日 燃やすな放射能汚染木-田村バイオマス控訴審の不当判決と放射能ごみ焼却を考えるオンライン・カフェが開かれました、当日は九州から北海道、さらには米国からの参加もあり、内容の濃いものになりました。

プログラムは下記のようなものです。

◆報告:19:30~20:50
①福島の山林汚染とバイオマス発電による放射能のばらまき(放射能ごみ焼却を考えるふくしま連絡会:和田央子)
②訴訟に至った経過と住民の思い(原告代表:久住秀司)
③控訴審判決内容と批判(ちくりん舎:青木一政)
④訴訟の意義と成果。産廃焼却炉の隠れ蓑としての「バイオマス発電」の問題点(弁護士:坂本博之)
◆休憩:20:50~21:00
◆質疑と意見交換:21:00~21:30

当日のZOOM録画記録とプレゼン資料をアップしご報告とします。

録画は画像をクリックすると見ることができます。

プレゼン資料は下記からDLできます。

福島の山林汚染とバイオマス発電による放射能のばらまき(放射能ごみ焼却を考えるふくしま連絡会:和田央子)

訴訟に至った経過と住民の思い(原告代表:久住秀司)

控訴審判決内容と批判(ちくりん舎:青木一政)

チャットの抜粋は下記からDLできます。

チャット抜粋

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オンライン・カフェ:田村バイオマス控訴審の不当判決と放射能ごみ焼却を考える

2023330日(木) 19:3021:30

  • ZOOMを用いたオンライン・カフェ。
  • 15分前くらいから開場します。
  • 参加費無料

 

参加希望の方は、こちらをクリックしてください。 

または下記のQRコードからでも可能です。3月29日までに申し込みをお願いします。

●報告:19:30~20:50

①福島の山林汚染とバイオマス発電による放射能のばらまき
(放射能ごみ焼却を考えるふくしま連絡会:和田央子)

②訴訟に至った経過と住民の思い(原告代表:久住秀司)

③控訴審判決内容と批判(ちくりん舎:青木一政)

④訴訟の意義と成果。産廃焼却炉の隠れ蓑としての「バイオマス発電」の問題点
(弁護士:坂本博之)

●休憩:20:50~21:00

●質疑と意見交換:21:00~21:30

チラシはこちらからDLできます。オンラインカフェ申込チラシ

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グリーン・ピース・ジャパンのHPでちくりん舎の活動が紹介されました

グリーン・ピース・ジャパンによるちくりん舎の紹介記事はこちらから見ることができます

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田村バイオマス住民訴訟判決-仙台高裁は民主主義の破壊者となり下がった

根拠もデータも示さない行政と業者を全面擁護

2月14日、仙台高裁において田村バイオマス住民訴訟の控訴審判決が石栗正子裁判長によって読み上げられた。「判決主文、本件控訴をいずれも棄却する」との言い渡しに、傍聴席の一同は一瞬唖然とし、傍聴席は静まり返り、10秒程度だろうか傍聴者は誰も席を立とうとせずフリーズした。石栗裁判長は、あろうことか、そのあと右手で振り払うようなしぐさを見せ、傍聴者の退席を促した。小声で「次の法廷がありますから」とか言ったという人がいたがほとんど聞こえなかった。

 この裁判の原告の主張は、放射能汚染木の焼却に不安を覚える住民に対して、本田仁一田村市長(当時)が「住民の放射能への不安が強いから」「バグフィルタの後段に高性能フィルタを付け、国内最高レベルの安全性を確保する」と議会で答弁。この高性能フィルタ(HEPAフィルタ)が実は、その名に値しない、まがい物で、議会と住民をダマしたというものであるから、田村市は田村バイオマスに支出した15億4千万円の補助金の返還請求をせよ、というものである。

 結論から言えば、政治家が業者との結託し虚言を吐き、蓋を開けてみれば、全く異なるものになっている、残念ながらこの国でよくあるパターンが繰り返されたことがこの裁判を通じて明らかになった。まさに議会制民主主義の問題である。法廷で被告は、上記の原告主張を、意図的に捻じ曲げ、バグフィルタで安全は確保されており、「安心のため設置」と言い換え、HEPAフィルタの「集塵率は数値化しているものではない」とまで主張した。そして裁判官もこれに載ったのである。

 放射性廃棄物の焼却炉用のHEPAフィルタにはJIS規格(Z 4812)がある。この規格のポイントは現場に設置した状態でその集塵率を測定することである。1μm(1ミリの千分の一)以下の細かな粒子まで捕捉するためには、工場出荷時の試験だけでは不足で、輸送や設置、施工時の変形などで漏れが生じる恐れがあるからである。「放射能への不安」対策として「国内最高レベルの安全性」と言うのであれば当然、このJIS規格に従って集塵率の値を示すべきだ。

 ところが判決は、本施設は原子力施設ではないから、放射能焼却炉用フィルタのJIS規格に則ったものと「説明した証拠はない」として、原判決を踏襲した。つまり「放射能対策用HEPAフィルタを設置したとは説明していない」という居直り、「勝手にJIS規格に則った確実なものを設置すると解釈したあなたがたが悪い」ということだ。これこそ詐欺師やペテン政治家の手法だ。高裁はそれにお墨付きを付けたのである。

 判決は、原告が主張したHEPAフィルタの固定方法の欠陥(米国エネエルギー省核排気清浄化ハンドブックに基づく)について「不適切な設計であるというにとどまり、これにより・・・放射性物質をより高度に捕捉できず、放射性物質の拡散防止対策を万全にするとの説明が虚偽」ではないとしている。微小な隙間の存在が許されないHEPAフィルタユニットの固定という、設備の根幹にかかわる部分が「不適切な設計」であっても、「対策は万全」というのはウソとは言えない、という驚くべき判断、牽強付会というべきものだ。

 判決があえて触れていない部分がある。本施設のHEPAフィルタは縦横60cm、厚さ30cmのHEPAフィルタユニットを6列5段に並べて一体のものにしている。当然、この30個のHEPAユニット間の隙間からの微小粒子漏れを防がねばならない。ところで、第1審で被告は、この30個のユニットは工場で組み立て、漏れがないことをチェックしてから現地で設置するから漏れはないと説明した。ところが第1審判決後の、21年9月にフィルタが目詰まりを起こしたうえ、それを「定期点検」と称して交換したと説明した。工場から再度、30ユニット一体のものを持ち込んで入れ替えるにはダクトの解体が必要だが、その形跡はない。明らかに第1審判決後に発生した事象について、説明がつかず都合が悪いから無視したのだ。

 第2審で裁判長の指示で被告が提出した写真では、バグフィルタとHEPAフィルタの間の床に、飛灰らしきホコリ状のものが積もっており、足跡やホースでこすられた跡まである。これこそバグフィルタからの漏れの証拠だ、という追及に対し、判決は「上記写真のみでは・・バグフィルタを通過した排ガスから生じたものであるということはできず」と堂々と居直っている。それでは、どこからこのホコリはやってきたのか。被告はもちろん、判決でも何も説明していない。なんと被告に優しい判決であることか。

燃料チップの放射能測定のサンプリングでは、荷台の異なる4箇所から深さ150mm程度までスコップでチップを採取するとの説明であったが、実際の作業では、作業員は自分の足元周辺から採取するのみであることを写真とビデオの証拠を付けて追及した。しかし判決は「仮にそのようなことがあったとしても・・すべてにおいて不十分な検査にとどまっていたということはできない」と被告を擁護している。

さらに事前の説明では、上記4箇所からのサンプルを混合して、その中から1検体分を取り出す(縮分という)と説明していたが、被告提出の作業手順書ではその工程そのものが、欠落しており、実際も上記のように足元周辺のみのサンプル採取である。それに対して判決は縮分が、試料の「ばらつきを補正するのに有用であるとしても、採取した試料の全量を検査することにしたことにより」杜撰な検査ではないと強弁する。被告はダンプの荷台の1箇所のサンプル採取ではダンプ荷台の大量のチップの濃度のばらつきを見過ごす恐れがあるから「縮分」法を提示したはずだ。説明ではまっとうに見えることを実際にはやらず、「採取した試料を全量検査」だから杜撰でないとの言い訳はペテン師のやり方だ。高裁はこの言い訳にお墨付けを与えた。高裁もペテン師のグルとしか言いようがない。

その他、原告が指摘した問題点は数々ある。チップ放射能濃度測定時間が異様に短いこと、チップ燃焼では800℃以上にした排ガスをバグフィルタ手前では170℃まで冷却しなければならないが、その根拠となるデータを一切提出しておらず、バグフィルタの健全性が保障できていない点など、挙げればキリがない。

高裁判決はこれら全てについて、問題はないとデータや根拠なしの被告の主張をそのまま認めた。

石栗正子裁判長は、控訴審1回目で原告側が求めた点について、説明するよう被告側に指示するなど、原告に寄り添うような姿勢を見せた。しかし幻想は見事に打ち砕かれた。本訴訟に限らず、裁判所は政治家、行政、大企業など権力の強いものに甘く、権力のない民衆の利益をまもる公正な立場に立たないことが、またしても証明された。しかし、例外的にではあるがまっとうな判決を出す場合もあることも事実だ。

高裁判決は棄却となり、原告の敗訴となった。しかし本裁判は様々な事実を白日のもとにさらした。「国内最高レベルの安全性」というのが放射能焼却炉用のJIS規格も満たさない設備であり、集塵率も出すことができない虚偽の説明だったことが明らかになった。集塵率も出すことが出来ず不適切な設計で設置されているHEPAフイルタは全く本来の機能を発揮せず、実質的にガランドウということができる。そのうち形だけ取り付いているかもしれないHEPAフィルタを取り外しても誰も気づかない。燃料チップの検査では、田村バイオマスは事前説明通りのチェックさえしていないのに、堂々と居直る、全く信頼のおけない会社であることが明らかになった。HEPAフィルタだけでなく、バグフィルタから排ガスによる飛灰が漏れていることが写真で明かにされた。田村バイオマスという会社の技術力の低さ、環境対策に無頓着無関心で不誠実な会社であることが裁判を通して明らかにされた。このまま田村バイオマスが稼働を続けるならば、周辺環境の悪化は避けられない。住民の監視が絶対に必要であることなどである。

「まけないことは諦めないこと」。誰が書いたのか、辺野古のテントに書かれていたスローガンを噛み締めよう。

※控訴審判決文はこちらからDLできます。
田村市バイオマス発電住民訴訟・仙台高裁R5.2.14判決

田村バイオマス訴訟支援の会・ちくりん舎

青木一政

 

 

 

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ちくりん舎ニュース32号を発行しました

ちくりん舎ニュース32号を発行しました
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大気浮遊塵中のセシウム濃度

更新しました。
・大気浮遊塵中のセシウム濃度推移グラフ(2017~2022.9NEW
                                                                      (2023.1.31更新)

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2月14日:田村バイオマス訴訟高裁判決-傍聴と報告会にご参加ください

福島県田村市大越町に建設された田村バイオマス(以下田村BE)は県内の放射能汚染木を燃料として使うことを公言しているバイオマス発電所です。地元大越町の住民は「大越町の環境を守る会」を結成、田村市が田村BEに支出した補助金14億6千万円の支出を不当としてその返還を求める裁判です。

2月14日(火)いよいよ判決を迎えます。

2023214日(火)仙台高裁 1320

●記者会見と報告集会
記者会見 14:30~
報告集会 15:00~
仙台戦災復興記念館 4 階第 4 会議室(仙台高裁より徒歩8分)仙台市青葉区大町2丁目12−1

控訴審判決チラシはこちらからDLできます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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報告:中間貯蔵施設と伊達市バイオマス発電施設見学ツアー(その2)

ツアー2日目午前は、福島県伊達市梁川町に建設中のバイオマス発電の現地視察を行い、午後から木質バイオマス発電についての学習会で講師としてお話しをしました。

梁川町バイオマス発電は群馬県の産廃業者の株式会社ログが進めている事業です。福島県伊達市梁川町の工業団地の一画にあり、すでに建設はすすんでいます。発電所は福島バイオパワーとなっています。

既に建設は進んでいる

発注者は株式会社ログとなっていますが、事業所名は福島バイオパワーとなっています。

 

現場は工業団地ですが、すぐ近くには民家があり住宅街が広がっています。この問題を察知して伊達市議会議員の勉強会でレクチャーをしたのが2020年10月です。

株式会社ログによる市幹部や市会議員への説明会では、建築廃材6割、廃プラ4割を燃料とするとの説明をしました。事情を知った梁川地域の住民は「梁川市民のくらしと命を守る会」を結成し、誘致反対の署名を9000筆集めて市議会に提出、市議会も昨年、全員一致で反対決議を上げました。

須田博行伊達市長は「建設については法令上、市が関与できないが、引き続き住民から要望があれば説明を求めていきたい」として事実上容認の立場です。

学習会には70人以上の住民が参加し熱のこもったものになりました。

学習会の様子

「バイオマス発電は」隠れ蓑、実際は産廃処分のためのごみ焼却炉

今回の学習会の事前準備の中で疑問だったのは「木質バイオマス発電」としてFIT認定を受けた事業が、どうして「建築廃材6割、廃プラ4割」などと堂々と説明できるのか、という疑問でした。そして分かったことは「バイオマス発電」は隠れ蓑で、実際は産廃焼却炉であるようなものを「木質バイオマス発電」として住民をダマして受け入れさせるような仕組みになっている、ということです。

FIT(再生エネルギー固定価格買取制度)では木質バイオマス発電について「建築廃材、一般廃棄物」も燃料として対象に含めています。ここでいう一般廃棄物とはどのようなものでしょうか。経産省によるFITの説明では、一般廃棄物として「剪定枝・木くず、紙、食品残さ、廃食用油、黒液」を例示して説明しています。廃プラなどの産廃ごみは明示されていません。

ところが、環境省が発行している「廃棄物処理施設における固定価格買取制度(FIT)ガイドブック」という資料があります。この資料のQ2-8「バイオマス発電おける一般廃棄物発電設備においては、バイオマス比率を毎月1回算定することとあるが、具体的には何をどうやって測定すれば良いか?」という設問に対して、「廃棄物中の紙類、厨芥類、草木類(木、竹、わら類)、布類、プラスチック類(ビニール、合成樹脂、ゴム、皮革類)」の熱量ベースでのバイオマス比率を算定して、報告することと、説明しています。

さすがに、FIT制度ではプラスチック、合成樹脂等はバイオマスの算定には入っていないようですが、業者からの「月1回の報告」だけですので実際のところ現場でいいかげんな数字を出してもチェックしようがありません。

それよりも何よりも、こうしたQ&Aがあること自体が意図的に、実態は発電目的ではなく産廃業者の焼却炉であるにもかかわらず「木質バイオマス発電」としてFIT認定して、住民の反対をごまかすような枠組みになっていることが明らかになりました。

地元の住民はこんな設備を許してはいけない、ということで、産廃問題に詳しい坂本博之弁護士とオンラインでつなぎ、今後の進め方について協議をしました。

※当日の青木のプレゼン資料はこちらからDLできます。

※当日の「市民のくらしと命を守る会」資料はこちらからDLできます

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報告:中間貯蔵施設と伊達市バイオマス発電施設見学ツアー(その1)

12月10日から11日にかけて福島へ調査ツアーに出かけました。今回のツアーの目的は下記のようなものです。

(1)中間貯蔵施設の現状見学
(2)伊達市梁川町のバイオマス発電現地調査と地元住民学習会での講演
(3)伊達市内の汚染状況実態調査と土壌サンプリング

 中間貯蔵施設とは大熊・双葉両町にまたがる広大な施設でフクイチをとりかこむような形に位置しています。施設を運営しているJESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社)の案内で構内に入り見学をしました。

中間貯蔵施設の場所

 

 中間貯蔵工事情報センターで10分程度の案内ビデオ視聴とブリーフィングのあと、JESCOのマイクロバスで構内を回りました。前回(2021年4月)は双葉町側を一周するコースでしたが、今回は大熊町側を一周するコースでした。

 構内に入ってまず驚いたのは、既にほとんどの「除去土壌」=汚染土の搬入と処理は終了していたことです。処理のために建設した受け入れフレコンバック解体施設、土壌分級施設、可燃物焼却炉、1.5kmにもおよぶ長大なコンベアラインのほとんどが解体、撤去されていました。

 汚染土壌の埋め立て工事もほぼ終了状態です。

汚染土埋立場所(緑のシートは雨よけ)この上に覆土をする

見学用展望台での線量1.18μSv/h

 

 工事に必要な道路や施設周辺の除染してあるが、未契約の土地(中間貯蔵施設として使えない)、工事に不要な土地などは全く除染していないとのこと。JESCOの説明では道路脇の森林などは20-30μSv/h程度はあるそうだ。

 大熊、双葉両町にまたがる広大なエリアのうち約7%が未契約状態のため、そこは飛び地のような形で手を付けていない。残りの93%のうち、約10%が賃貸契約、90%は国が買い取りとのこと。

 仮に30年後に汚染土を県外に全て移動させることができたとしても、広大な国有地(国が買い取った部分)となり、その中に個人所有地が点在した形となる。点在する個人所有地で普通の生活や個人的な有効活用ができるとは考えられない。

 環境省は「中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外で最終処分を完了する」とした日本環境安全事業株式会社(JESCO)法により、「減容化」「再利用」「土壌は重要な資源」として県外各地での処分に必死になっている。最近発表された所沢市や新宿御苑などでの「再利用」実証試験はそのための地ならし。

 たとえ受け入れるところがあったとしても、膨大な量の汚染土壌を再びほじくり返し、受け入れ現地まで輸送するために膨大な費用と輸送中の事故による汚染土拡散などのリスクが生ずる。

 法を改正して、中間貯蔵施設を最終処分場とすべきことが今となっては最も合理的ではないか

大熊町老人デイサービスセンター(事故直後に避難したしのままの状態)

デイサービスセンター駐車場の車もそのまま

 

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石栗正子裁判長が結審を宣言ー田村バイオマス住民訴訟

11月18日14時30分から田村バイオマス住民訴訟の第3回口頭弁論期日が開かれました。

被告から第2準備書面、こちらから準備書面(4)(5)などを提出しました。

近日までに提出された書類の確認をした後、裁判長が、「これまでに提出された資料から、この事件の判決を書くことが可能だと思う。控訴人から出されている人証の申請、検証申立、文書提出命令申立、調査嘱託申立は、必要がないと考えるので、却下します。本日で結審します。判決の言い渡しは、来年2月14日(火)午後1時20分~に指定します」と言いました。

この裁判は、結局、証人尋問も現地検証もしないで結審ということになりました。

裁判後の報告会の様子

被告は原告側が指摘した様々な具体的指摘に対して「否認する」と主張するだけで、何ら具体的な説明は在りませんでした。それどころか、HEPAフィルタは「安心のために設置したもの」との主張を繰り返し、「HEPAフィルタの集塵率(漏れテスト)のデータは「存在しない」と開き直ったような主張を行いました。

石栗正子裁判長は、これまでの経過から既に田村バイオマスが設置したというHEPAフィルタが、その機能、性能を保証できない「偽物」「お飾り」であることが十分に明らかになったとして、結審を宣言したのでしょうか。

それとも、一応、原告側の言い分を聞いて、原告に寄り添うようなポーズをとり、田村BEにそれなりの資料を出させ、行政と業者を擁護する作文ができると判断したのでしょうか。

宮城合同労組のご協力で会場をお借りできました

繰り返しになりますが、被告側はこれまで一貫して具体的データや資料を出さず言いのがれ、論点そらしに終始しました。控訴審でようやく資料のようなものが出てきましたが、これとてツッコミどころ満載の資料でした。最後に出てきたのは「安心のため設置した」のだから「集塵率(漏れテスト)データは存在しない」という、技術的には絶対スジの通らない居直り宣言です。

判決は2023年2月14日13時20分からとなりました。判決後は記者会見を兼ねて報告会を開きます。

詳細が決まりましたらご連絡します。注目をお願いします。

 

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【報告】11・1ちくりん舎オンライン・カフェ~汚染木を燃やす木質バイオマス発電について考える~

11月1日に「再エネ」を隠れ蓑に放射能のバラマキ~汚染木を燃やす木質バイオマス発電について考える~と題してちくりん舎オンライン・カフェが開かれました。

カフェ前半は以下のような内容で行われました。

●青木一政(ちくりん舎・田村バイオマス訴訟支援の会)
HEPAフィルタが住民と議会をダマすための虚偽設備であることの解説。
●久住秀司(原告団長)
訴訟に至った思いについて 
● 坂本博之(弁護士)
福島地裁での判決と仙台高裁での展開をどう見るか

カフェ後半は各地からバイオマス発電をめぐる報告がありました。
長野県東御市からは、燃料チップ不足でバイオマス発電が停止している状況など。
福島県伊達市では建築廃材や廃プラなどを燃やすにも関わらずバイオマス発電として認定を受けて着工している状況やそれに地元住民や議会が反対していることなどが報告されました。

当日の録画は以下から見ることができます。
https://youtu.be/XkM8pcOzC2k

またちくりん舎青木の報告資料はこちらからDLできます。

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ちくりん舎ニュース(第31号)を発行しました

ちくりん舎ニュース(第31号)を発行しました。
●田村バイオマス住民訴訟●檜原村に産廃焼却場 !?●本の紹介●オンライカフェのお知らせ●よもやま話●会員募集

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11・1ちくりん舎オンライン・カフェ~汚染木を燃やす木質バイオマス発電について考える~

11・1ちくりん舎オンライン・カフェ

「再エネ」を隠れ蓑に放射能のバラマキ
~汚染木を燃やす木質バイオマス発電について考える~

●日時:11月1日(火)19:30から21:30
●形式:ZOOMによるオンライン・カフェ(お茶でも飲みながら気軽に話そうという趣旨です)
●参加費:無料。
●参加申込みが必要です;10月31日までに lab.chikurin@gmail.com 宛てに
氏名(ニックネーム可)、メールアドレス、所属またはお住まいの都道府県を添えて参加希望とお知らせください。
●内容:
(1) 報告;田村バイオマス発電訴訟-ウソにウソを重ねて収拾がつかなくなる被告
青木一政(ちくりん舎・田村バイオマス訴訟支援の会)
    HEPAフィルタが住民と議会をダマすための虚偽設備であることの解説。
久住秀司(原告団)訴訟に至った思いについて
坂本博之(弁護士)福島地裁での判決と仙台高裁での展開をどう見るか

(2)各地からの報告と情報共有
※報告されたい方、質問など事前にメールでご連絡いただけると嬉しいです

●共催:田村バイオマス訴訟を支援する会・ちくりん舎

          ・・・・・

♦ちくりん舎(NPO法人市民放射能監視センター)は高精度測定を通じて福島原発事故後の放射能汚染の実態を調査しています。私たちがこの裁判を支援しているのは、同バイオマス発電が、福島県内の放射能汚染木を燃料とすることを公言した最初の施設であり、除染土(汚染土)の「再利用」や汚染水の海洋放出と同様に放射能のバラマキにつながるからです。
♦田村バイオマス住民訴訟とは、本田仁一市長(当時)を被告として、「田村バイオマスエナジー(以下田村BE)に支出した11億6300万円の補助金が詐欺あるいは、市の錯誤にもとづくものであるから、「市は田村BEに対して損害賠償請求又は不当利得返還請求をせよ」というものです。
♦2019年9月から約2年間にわたる福島地裁では田村市側は徹底して情報を明かにせず、言い逃れ、言葉のすり替え、論点そらしに終始してきました。それにも関わらず22年1月、福島地裁(小川理佳裁判長)はこれまでの論争を全く無視した行政擁護の不当判決を下しました。
♦原告は直ちに控訴を決め、闘いの場は仙台高裁に移っています。

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ウソにウソを重ねて収拾がつかなくなる被告-田村バイオマス控訴審第2回期日(3)

シリーズでお伝えしてきた控訴審第2回期日の報告も3回目(最終回)です。

高裁裁判長の指示により、ようやく被告らが設置したというHEPAについての報告書が、ダクト内はガランドウではなく、何かが付いているらしい雰囲気を示すだけのものであり、技術的にみると、ダクトの溶接と漏れ確認はメーカーの資料を抜粋したものですが、内部に設置されているというHEPAフィルタの写真は田村バイオマスが写した写真であり、異様に接近したアングルで写されており、撮影日時の記録もなく、これが本当に田村BEのダクト内に設置されたものであるかどうかさえ疑わしいものであることは、前回までに報告しました。

ここでは、そのその写真の信憑性の問題は保留し、その写真が田村BEに設置されているものだとして技術的に仔細な点を見てゆくと、更にいろいろな問題が出てきます。

●バグフイルタの出口部分(つまりHEPAフィルタの入口部)はホコリまみれ

被告が提出した「写真撮影報告書」(乙第46号証)の写真をみるとHEPAフィルタの入口側から写した写真があります(4p)。下記の写真がそれです。

HEPAフィルタを上流側から写した写真

 上記写真がHEPAフィルタを上流側から、つまりバグフィルタ出口部分の写真です。皆さんはこの写真のどこに注目しますか?多分、HEPAフィルタユニットらしきものが多数、並べられて設置されているところに注目するでしょう。しかし注目すべきところはそこではありません。奥の方に脚立がおいてある床面を見てください。随分とホコリが層をなしていることが判ります。ホースでこすられてホコリの層が払われたり、ホコリの層の上に足跡らしきものまでついています。

バグフィルタは99.99%まで煤塵を捕捉する(国立環境研 大迫論文)からバグフィルタで十分安全は確保されていると言いますが、HEPAフィルタの床にこのようなホコリが堆積するということは、かなりの量の煤塵がバグフィルタでは捕捉しきれず実際には漏れていることになります。

逆説的ですが、HEPAフィルタの大敵は煤塵なのです。粒径1μm(1ミリの千分の一)以下の粒子を捕捉するため排ガスの煤塵量(米エネルギー省発行の核空気洗浄ハンドブック(NACH)では0.23mg/㎥以下としている)が多いと短時間で目詰まりを起こしてしまいます。このための対策として、HEPAフィルタの上流側にやや目の粗いプレフィルタの設置が必要となります。原告側は既にこのことを、第1審で指摘しています。

被告側は、「バグフィルタが十分な煤塵の捕捉をするため、プレフィルタの役割を果たしている」と主張していたのです。その結果の写真がこのような状態なのです。被告側は原告の追究にその都度、言葉のすり替え、論点そらしで対応してきました。HEPAフィルタを設置して維持することの難しさを知っていれば、この写真を証拠資料として提出するのは「まずい」、「床の煤塵層を掃除してから写真を撮れ」というでしょう。私が被告の立場であれば必ずそのように指示します。被告側は、苦し紛れに屁理屈、言い逃れ、論点そらしに終始してきました。ひょっとしたら、このプレフィルタに関する議論を忘れたのかもしれません。ウソはウソを呼びます。原告側は控訴審第2回期日においてこの点を指摘しました。被告はまたつじつま合わせしなければならない理由を増やしてしまいました。

●HEPAフィルタの固定方法は重大な設計不良

更にこれらの写真を検証すると重大な設計不良がみつかりました。HEPAフィルタユニットの設置方法についての問題です。

HEPAユニットの固定方法の欠陥

重大な設計不良とは上記写真のA部、B部の部分のことです。A部では上下2つのHEPAユニットの角を1枚の押さえ板と1個のボルトで固定しています。B部においては、取り囲まれる4個のHEPAユニットの4つの角を1枚の押さえ板と1個のボルトで固定しています。これは図で示した部分だけではなく、6列5段の30枚のHEPAユニットの固定全体で行われています。

問題は、例えばA部において下部のHEPAユニットの角の固定を強くしようとして締め付けると、その影響は下部ユニットのみではなく上部ユニットにまで影響が及ぶことになります。B部においては1個のHEPAユニットの角の固定を強くしようとして締め付けると、その影響が他の3か所にも及ぶことになります。
こうして、1箇所の緩みや締めすぎを調整しようとしても、それが連結する周辺のHEPAユニットの固定に影響を及ぼすことになるのです。

1箇所のみを調整しなけれればならない場合は容易に発生すします。例えばHEPAユニット本体の微妙な歪み、HEPAユニットを固定し保持する後方のフレーム(写真では見えない)のわずかな曲がり、後方のフレームとHEPAユニット間に漏れ防止として挟み込まれていると想定されるガスケット(フレームとHEPAユニットの平面の間に挟み込む漏れ防止のためのクッション材、写真では見えない)の微妙な厚み差や硬度差、そして押さえ板の曲がりなどです。
これに対する対策は極めて簡単でHEPAユニットの角を固定する押さえ板とボルトを共有せず、独立にすれば良いだけでのです。
これは機械設計者からみれば極めて常識的な話ですが、そのようになされていないことは、「お飾り」だからついていれば良しとして、構造を簡略化しコストダウンしたためと推定できます。何度も繰り返すように1μm以下の粒子がフィルタ本体を通過せず、HEPAユニットとフレームの接合部の隙間から漏れてしまうような事態を避けるためには、全てのHEPAフィルタユニットがガスケットを均等な圧力で押さえつける必要がある。そのためには、すべてのHEPAユニットの角が独立して適正な締め付け圧で設置されなければなりません。その観点からすると極めて不適切な設計です。

このことは、先述したNACHの第4章「ハウジングの設計とレイアウト」の4.4.6「フィルタのクランプ(締め付け)とシーリング(封止)」節内の図4.15「HEPAフィルタの取り付けフレーム(2つのクランプ設計を示す)」として、推奨されない例(悪い例)として示されています。

●高裁における控訴審で初めて出て来た資料が示すもの

福島地裁での第1審では、被告は徹底して設計図面やHEPAフィルタ交換の手順書、漏れテストデータ、集塵率データなど技術的な資料を一切出さず、言い逃れ、論点そらしに終始してきました。仙台高裁での控訴審第1回期日で石栗正子裁判長が被告側に資料提出をもとめました。その結果、出て来た資料の主なものが、この3回シリーズで解説したものです。紙面の都合で書ききれませんが、これ以外にも出て来た資料から、原告の主張の正しさを証明するものが出てきました。

仙台高裁においては、これらの資料と原告の主張を虚心坦懐に見ていただきたいものです。

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ウソにウソを重ねて収拾がつかなくなる被告-田村バイオマス控訴審第2回期日(2)

前回に引き続き、仙台高裁での第2回口頭弁論期日でのツッコミどころ満載の実態を紹介したいと思います。前回紹介したように、裁判長からの被告への釈明要求の一つである「①HEPAフィルタの内容がはっきりしない。具体的資料を出すように。」に応えて田村バイオマスエナジー(以下田村BE)は「報告書」(乙43号証)なる書面を出してきたのです。

●奇妙な報告書の構成

この報告書を見ると2-3ページには(a)日立三菱パワーシステムズインダストリーの名称が入った据付記録が付いています。(b)3ページ以降14ページには田村BEがHEPAフィルターの中に入って撮ったという写真がついています。(c)15-17ページには近藤工業㈱のフィルタ総合カタログからの抜粋がついています。

一見すると、HEPAダクト内はガランドウではなく、それらしきものが付いているという印象を持ちます。しかし技術的に見るとこれは極めて奇妙な構成になっているのです。

(a)は確かに日立三菱パワーシステムズインダストリーの名称が入った図面であり、しっかりしたもののような印象を与えます。しかしこの据付記録は、あのラグビーボールのような奇妙な形をしたダクトを定位置に設置し溶接しシャワーテストという漏れ確認を行ったというだけのものです。肝心のHEPAユニットが(図面上では描かれていますが)設置されたということを証明するものではありません。

(b)は田村BEがダクトの中に入って写したという写真がついています。この写真は撮影日付記録もなく、また必要以上に近接して写しているため、田村BEのダクト内のHEPAユニットであることは確認できません。

そもそも、何故据付記録はメーカーの記録を出しているのに、HEPAフィルタユニットの取り付け状態を示す図面や写真はメーカの資料から抜粋して出さないで、信憑性の乏しい写真を撮らなければならないのでしょうか。こうしたプラントでは、設備メーカは設備引き渡し時に設備完成図書として、細かい部分の設計施工図面やテスト結果、その過程を示した明瞭な写真記録を出しているるはずです。これを抜粋して出さないで何故わざわざ田村BEが写真を撮って提出しなければならないのでしょうか。

●奇妙さを通り越して笑いたくなるような証拠写真

下図がHEPAフィルタの型式を示したと思われる写真です。

田村BEが提出した「報告書」の14p

 

田村BEは今回の控訴審第1準備書面で、フィルタの型式が「1LFU-190」であることを明らかにしました。上記写真がそれを示すつもり?の写真なのでしょうか。まるで情報開示請求でよく出てくるノリ弁状態の写真と見まがうような真っ黒な写真です。かすかに読み取れるのは「・・UTE FILTER」の文字が読み取れるだけで、上述した型式を確認することはできません。全く疑念を晴らそうとしないで、「疑ってくれ」と言わんばかりの写真です。皆さんはこの写真を見てどう思いますか?何を説明したいがために、こんな写真を裁判所と原告に提出したのでしょうか。奇妙さを通り越してこっけいにも感じる証拠写真です。

●近藤工業㈱フィルタ総合カタログを都合の良いところだけ抜粋して証拠として提出

被告はHEPAフィルタの型式が「1FU-190」であることを明らかにして、近藤工業㈱フィルタ総合カタログの60–61ページだけを抜粋して証拠として提出しています(前述「報告書」の14-17ページ)。

ところで近藤工業㈱のフィルタ総合カタログはウエブ上で公開されていて誰でも見ることができます。このカタログの76ページ以降に「原子力施設用フィルタJIS Z 4812適合)の製品が紹介されています。

なぜこれらJIS Z 4812適合のものを使わないのでしょうか。そもそも被告の本田仁一市長(当時)が「住民の放射能に対する不安が大きいのでバグフィルタの後段に高性能フィルタを付ける」「国内最高レベル」と議会で答弁しているのです。放射能対策用のフィルタがあるのにそれを選択せずクリーンルーム用のフィルタを付けたというのは、住民と議会をダマすために「何かそれらしきものが着いていれば良い」と相談した?ことを証明するようなものです。

●必要なところは抜粋せず、それらしい「雰囲気」を示す程度の証拠ではダマされない

仙台高裁の裁判長や裁判官には是非、原告の主張と被告の主張を虚心坦懐に読み込んでいただきたいと思います。第1審の福島地裁では「そもそもHEPAフィルタは、JISにも規格が設けられた性能を有するエアフィルタであり放射性廃棄物の減容化施設でも用いられているものであり、・・放射性物質を捕捉できないものであるとは認められない。」などの暴論を踏襲しないでいただきたいものです。

被告側提出:控訴審第1準備書面
被告側提出:田村BE作成「報告書」(乙第43号証)

 

※3に続く

 

 

 

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ウソにウソを重ねて収拾がつかなくなる被告-田村バイオマス控訴審第2回期日(1)

8月26日仙台高裁において田村バイオマス訴訟控訴審第2回口頭弁論期日がありました。この内容を複数回に分けて報告したいと思います。

写真は仙台高裁近くの宮城合同労組の部屋をお借りしての支援者・傍聴者への報告会

控訴審第1回期日では、裁判長から被告側に釈明を求める驚きの展開になりました。①HEPAフィルタの内容がはっきりしない。具体的資料を出すように。②昨年の「定期点検」でバキュームカーで掃除、交換したというがその具体的説明。③燃料チップを1分で測定できるという具体的説明。の3点の説明要求に対して、被告側は「控訴審第1準備書面」を出してきました。

その内容が、技術的に見ればオウンゴール連発、ツッコミどころ満載のものでした。裁判所や原告をこの程度のものでごまかすことができると考えたのでしょうか。早速、反論の意見書を作成、その内容も含んで坂本弁護士が原告「控訴審準備書面(2)(3)」を提出しました。

開廷前に坂本弁護士は「今日で結審になるかもしれない」との可能性を口にしましたが、結局裁判長は「被告は原告の準備書面に反論しますか?」と問い掛け、被告側弁護士が「はい、2か月ほど時間をいただきたい」ということで、次回口頭弁論期日は11月18日(金)14時30分からと決まりました。

被告側はウソにウソを重ねて収拾がつかない状態になっています。多岐にわたりますので、その象徴的な事例をいくつか紹介したいと思います。

●稼働後2か月でHEPAフィルタが目詰まりした!?
被告側は上記②の説明要求に対して、令和3年6月にHEPAフィルタを交換したとして交換したHEPAフィルタ30枚の納品書と請求書を提出しました。令和3年6月とは田村バイオマスが稼働開始2か月後のことです。原告は(そして当然裁判所も)6月にHEPAフィルタを交換したという事実は承知していません。原告が問題にしたのば令和3年9月にHEPAフィルタダクトにバキュームカー(糞尿や汚泥を排出するもの)を持ち込んで掃除したという事実です。被告はよほどこの事実の説明を避けたい事情があるのでしょう。1μm(1ミリの千分の1)以下の超微粒子を捕捉する繊細なHEPAフィルタをバキュームカーで掃除するなど、およそ異常な行為です。

推測ですが、被告はこのバキュームカー掃除の説明を避けるために、令和3年6月のHEPAフィルタ交換の説明で「お茶を濁そう」と考えたのではないでしょうか。ところで、令和3年6月といえば、田村バイオマスが4月に稼働してからわずか2か月しかたっていません。バグフィルタが微粒子を十分補足できないために短期間でHEPAが目詰まりを起こす、それを防止するためにはプレフィルタというやや目の粗いフィルタを上流側に付けなければならないが、それがついていないということは、第1審の福島地裁で原告がHEPAフィルタが本来の機能を果たさない偽物である根拠として主張をしてきたところです。

当然、原告側はこの点をついて、わずか2か月でHEPAが目詰まりを起こしたのは、原告が主張してきた通りのことを証明するものではないか、との反論を意見書と準備書面で指摘したのです。法廷期日直前にこの反論を受けた被告側弁護士はそうとうウロタエたと考えられます。

何と、法廷の冒頭で被告控訴審第1準備書面中の「令和3年6月」の記載は「令和3年9月」の誤りだと口頭で告げたのです。・・・・しかし、被告が証拠として提出したHEPAフィルタ30枚の納品書と請求書にはしっかりと「2021年6月9日」の日付が記載されているのです。

この証拠として提出された納品書と請求書が偽造書類なのでしょうか、それともうろたえた被告側弁護士が早まって「令和3年9月の誤り」と言ってしまったのでしょうか。ウソにウソを重ねるから答弁に辻褄が合わなくなってボロをだしてしまうのです。被告側はウソの積み重ねに収拾がつかなくなっていることを示す一幕ではありました。

田村市バイオマス発電住民訴訟・控訴審準備書面(2)
田村市バイオマス発電住民訴訟・控訴審準備書面(3)
田村市バイオマス発電住民訴訟・甲116(甲113に対する追加意見書)

※(2)に続く

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