「放射能拡散に反対する会」主催の『除去土壌の再生利用』に関する環境省ヒアリング(4月5日)について、主催者からまとめ報告が出ました。ヒアリングのやり取りの書き起こしをもとに精査、検討の上で「環境省からの回答の概略」と「当会の見解」としてまとめられています。環境省が如何に酷いことをやろうとしているか、重要な告発になっています。
なお、この問題がなかなか多くの人に知られていない実態を踏まえて、5月28日にはオンライン学習会も予定しております。今回の回答にまで至った、初歩から振り返り学ぶことができます。是非ご参加下さい。
『除去土壌の再生利用』に関する環境省ヒアリング まとめ
日時:2024年4月5日13時半
場所:衆議院第二会館第六会議室
主催:放射能拡散に反対する会
【環境省からの回答の概略】
■「除去土壌の再生利用」に関する当会からの質問28件のうち21件について「今後検討する、整理する」もしくは「回答を控える」という回答であった。コストの試算、事業者・公共事業選定の基準、汚染土壌の減容技術等々、広範囲に亘って今後の検討項目であるとした。
■多くの項目が積み残しであるにも関わらず、「除去土壌の再生利用」に関する工程の全般:再生資材化から工事後の管理、災害時の対応まですべてにおいて国・環境省が責任を持つと断言した。
■「除去土壌の再生利用」に関する考え方の根拠、必要な手続きをすべて「放射性物質汚染対処特措法」の施行規則・ガイドラインで今年度中に定めるとした。国会での審議を不要とした。
■IAEA専門家会合が非公開で行われ、議事録も作成しないことを承認している。
■所沢市と新宿御苑での実証事業の計画について、変更はないとした。
【当会の見解】
◆多くの反対にもかかわらず、放射性物質汚染対処特措法(以下、「汚染対処特措法」)を一方的に拡大解釈し、国民的議論もなく国会審議も経ず、省令改正により「除去土壌の再生利用」を強行しようとしている。
◆「除去土壌の再生利用」は、当初から汚染対処特措法基本方針に定められ、放射性物質の除染とセットで準備されている。基本方針のパブコメでも再生利用を行わないよう求める意見が複数出されていた。にもかかわらず、それに対する適確な見解も示されず、再生利用の促進が基本方針となった。開始から13年経つにも関わらず、必要な規制事項等は未だ整わず、予算規模の試算さえ明示しないのは、この事業がいかに困難で無謀であるかを表している。
◆汚染対処特措法での指定廃棄物の基準値8,000㏃/㎏を土壌にも規定しようとしているが、本法は原発事故の緊急時対応のための特措法であり、時限的、限定的な措置に留め、当該8,000㏃/㎏の基準値を濫用すべきではない。
◆100Bq/kg超8,000Bq/kg以下の土壌の再生利用は行うべきでない。それに対して、環境省は「再生利用」を行うとして、再生利用全般(利用した施設等における再生利用土壌の管理を含む。以下同じ)について国・環境省が責任を負うと繰り返してしている。その場合、再生利用業者との委託契約を締結し、実施するようである。契約当事者間の運用ではなく、透明性のある体制を法律で確保しなければならない。また、適正な再生利用は国の責任で行う行為であり、受託者の違反に対しては罰則や原状回復を法律の規定で定める必要がある。そうでないと、農業者や地域住民が被害を受けるおそれがある。また盛り土や農地に利用された場合、国の管理責任とその履行方法が法律上明示される必要がある。法改正なしに再生利用を行なった場合には、施設の管理主体である自治体や土地所有者が実質的な管理責任を負わされる可能性が極めて高い。このように考えると、規制のコストがかかりすぎ、全国での「再生利用」の展開は現実的でないことを認識すべきである。
◆環境省は汚染対処特措法における「処分」に「再生利用」を含めようとしている。循環型社会形成推進基本法や廃棄物処理法など既存の法律においてはこのような解釈はなく、解釈として無理がある。
◆汚染を拡散させる「再生利用」については、「理解醸成」を進めるのではなく、ここで立ち止まるべきである。緊急に行うべきは、人の健康に影響をおよぼす量にしきい値のない放射性物質について、環境基本法のもとにある法律からすべて除外規定を削除し、さらに除外規定を削除した法律を含め、いかに基準を定めて規制するのか、国民、住民との間で真摯に熟議することである。
本ヒアリングは阿部知子衆議院議員(原発ゼロ・再エネ100の会事務局長)事務所のご助力で実現しました
※当日の質問項目と環境省の回答書面、ヒアリング録画はこちらからご覧になれます。
※ヒアリング録画を書き起こしました。こちらからDLできます。(2024.6.9追記)
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