韓国市民放射能監視センターのシンポジウムに参加しました(1)

2014年12月2日、韓国市民放射能監視センターのシンポジウムが開催されました。韓国市民放射能監視センターは2013年4月に設立総会が行われ、私もご招待されてお話をしました。

今回はセンター稼働1周年での記念シンポということで再びご招待がありました。参加報告記を書きましたので2回に分けてご紹介します。

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韓国市民放射能監視センターのシンポジウム参加報告
2014/12/4  ちくりん舎 理事 青木一政
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韓国市民放射能監視センターが稼働を始めて1年を機にシンポジウムを行いました。福島原発事故や健康被害の状況、汚染実態などを知りたいとのことで、私とフリージャーナリストの木野龍逸(キノリュウ)氏が招かれて訪韓しました。

[ハード・スケジュール]
前回2013年4月に韓国市民放射能監視センター(以下韓国監視センター)の設立総会にご招待されて今回は2回目。前回は1泊しかできなかったが今回は2泊ということで少しは余裕があるかと思いきや、前回以上にハード・スケジュールでした。

12月1日夕方にソウルへ入り、韓国監視センター代表のキム・ヘジョンさんと通訳兼今回のコーディネータのカン・ヘジョンさんと食事をしながら今回のシンポや一連の交流会の内容についての打合せです。韓国では昨年7月に発表されたフクイチからの汚染水流出問題で世論が沸騰し福島周辺7県からの魚の全面禁輸をしています。しかし韓国政府は日本側の要請(圧力?)によりこの禁輸措置を解除しようとしているとのこと。韓国側の参加者は魚の汚染状況に関心がとても高い。私もキノリュウさんも魚の汚染状況をメインに話す準備はしていないので若干とまどいました。また、韓国側の参加者は日本の状況を細かくウオッチしていて福島の現状について一般的な話は知っている、具体的ななまなましい話が知りたいとの厳しい注文でした。まあこのことについては(確認はしませんでしたが)キノリュウさんも十分自信はあったと思います。私も自分のデータがあるので何とかなるだろうと。

 

韓国市民放射能監視センター代表のキム・ヘジョンさん

韓国市民放射能監視センター代表のキム・ヘジョンさん

2日の午前10時から昼食も休憩もなしに13時40分まで延長してのシンポジウム。遅い昼食と休憩をとって、ハン・サリム生協に場所を移して、16時~18時過ぎまでそこの環境委員会の人達を前にプレゼンと懇談会。その後、ハン・サリム生協の環境問題活動家のカン・ユン氏と韓国監視センターのキャンペイナーのカン・オス氏と夕食を取りながらこれまた3時間程度懇談。2人とも30代前半の若者(男性)でとてもすがすがしい印象を持ちました。

翌日3日もまた朝10時~12時まで韓国YWCAの反核グループの皆さんの前でプレゼンと懇談。ということで夕方の飛行機に乗るまでびっしりのスケジュールでした。

[原発事故後変わってしまった日本人の感覚]
1日のシンポジウムは、韓国監視センター所長のイム・ユングン氏から監視センターで行ってきた魚の汚染状況についての報告、キム・ヘジョンさんからの韓国における食品放射能政策についての報告のあと、私とキノリュウ氏が報告を行いました。その後全体討論という流れです。参加者は約100名ぐらいです。

シンポジウムの様子

シンポジウムの様子

イム・ユングン氏の報告は韓国の市販の魚の放射能汚染調査結果についてのものでした。日本からは禁輸なので魚はロシア産、韓国産などの魚、150検体の測定結果です。韓国ではタラやサバなどが良く食べられるので、そうしたものを中心に調べたそうです。その結果では7%程度の検体から0.3~0.8ベクレル/Kgのレベルでセシウム137が検出されました。ロシア産のもの、大型スーパー販売のもので検出される比率が高いとの報告でした。0.3~0.8というとちくりん舎で測定している尿から検出されるレベルより少し高いぐらいです。「その精度で調べたら、そりゃ7%ぐらいはでるだろうな、日本の魚もそのくらいの物はざらにあるんではないだろうか」「日本で野菜やコメなどもこの精度で調べたら軒並み出そうだ」というのが第1印象でした。福島原発事故後私たちの感覚がずれてしまっています。5ベクレルか1ベクレルくらいの検出限界で出なければ「まあ良しとするか」という感覚がありますが、本当は検出されること自体が問題です。いつの間にか日本人の生活は放射性セシウムと共存しているような状況だということを改めて感じた次第です。

シンポジウムの登壇者

シンポジウムの登壇者

キム・ヘジョンさんのプレゼンは韓国の食品放射能政策についての批判でした。韓国政府は日本からの魚の禁輸措置の解除を検討している。日本政府は韓国の禁輸措置をWTOに提訴することをちらつかせて、解除の圧力をかけているということです。輸入再開反対、他国並みの放射能汚染検査の要求、放射能検査基準強化、子ども・妊婦へのガイドライン制定、汚染水排出の総量規制をすべき、韓国原発周辺での疫学調査の継続などの主張でした。

私は「政府の汚染実態の隠ぺいと市民による監視」というテーマで、前半は最近の「除染から帰還へ」の方針転換、「放射能被害は大したことない」という新たな安全神話など日本政府の汚染実態の隠ぺいの話をし、後半はちくりん舎の活動として尿検査やリネン布による大気中粉塵の放射能調査の話をしました。

キノリュウ氏はフクイチの汚染水流出の実態と東電による隠ぺい状況、甲状腺がんの多発状況とそれをスクリーニングによるものと固執する学者たちの見解とそれに対する疫学者からの批判、憲法の居住の自由を持ちだして、「20ミリ以下で一人でも帰還したい人がいれば解除する」と避難指定解除に走る政府の実態の紹介などでした。ジャーナリストらしく双方の見解を取材しての事実を紹介する中で「福島原発事故を無かったことにする」かのような現状が良く分かるものでした。

質疑の中で「今回のようなことが起こったら暴動が起きる。福島の人達は何故おとなしいのか。福島県知事選がどうしてあのような結果になるのか」という問いがありました。これにはキノリュウ氏も私もその答えに窮してしまいました。

韓国YWCAでの懇談会

韓国YWCAでの懇談会

 

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